前回、採点表で1位になったのは完成品ではありませんでした。自分でスイッチを入れ替える構成です。
土台になるキーボードを買って、そこに「押し始めも底打ちも30gf」という磁気スイッチを84個入れる。理論上は、私が探していた無重力ボールがそこにあります。
今回は、その発注をする前に立ち止まった話です。
買おうとしていたもの
土台は MelGeek MADE84 Pro(メルギーク メイド84 プロ)。84キーの75%サイズで、F列と矢印キーがあります。磁気スイッチのホットスワップに公式対応、トレイマウントにアルミプレート。国内で2万円を切る価格で買えます。
そこに載せるのが Gateron Magnetic Jade Attraction(ゲートロン マグネティック ジェイド アトラクション)。押し始め30±3gf、底打ち30±3gf、総ストローク3.2mm。押し始めと底打ちが同じ荷重だと公式に明記している、私が見つけた唯一のスイッチです。
前回「国内の取り扱いを見つけられなかった」と書きましたが、その後見つかりました。PCワンズが単品150円、35個セット4,500円で扱っています。
84キーぶんなら、35個セットを3つで13,500円。送料無料のラインにも乗ります。
ぽちっと押す直前まで行きました。

押す前に、一度だけ確認した
こういうとき、手が止まります。
印刷では、刷る前に必ず色校正を出します。データ上は正しくても、その紙にその機械でその条件で刷ったら、想定と違う色になることがある。だから本番の前に、一枚出して確かめる。当たり前の工程です。
今回も同じことをしようと思って、MelGeekの公式仕様をもう一度見にいきました。
対応スイッチの欄には、こう書いてありました。
TTC Magneto / TTC RGB Magneto / Gateron Magnetic Jade
「Gateron Magnetic Jade」です。「Attraction」という名前は、公式のどこにも出てきませんでした。

ドライバーの中を見にいった
Attraction は、無印の Magnetic Jade とは別設計です。数字を並べるとこうなります。
| 底磁束 | 総ストローク | |
|---|---|---|
| 純正 TTC KOM | 640±60Gs | 3.5mm |
| 無印 Magnetic Jade | 700±80Gs | 3.5mm |
| Attraction | 570±30Gs | 3.2mm |
Attraction だけ、磁束もストロークも違います。磁気式のキーボードは磁石の強さで押し込み量を判定しているので、これは無視できない差です。
気になったので、MelGeek のドライバーソフトに登録されているスイッチの一覧を確認しました。
Jade系は、無印・Pro・Max・GAMING の4種類が登録されていました。
Attraction はありませんでした。
つまり、載せたとしても、ドライバー上では「Magnetic Jade」を選んで手動でキャリブレーションする運用になります。ところが同じドライバーのトラブルシューティングには、こう書いてあります。
取り付けたスイッチと、ドライバーで選んだ種別が一致していることを確認してください
一致しない前提は、想定されていません。
ついでに探しましたが、この組み合わせで実際に動いたという報告も、1件も見つかりませんでした。Attraction はまだ新しいスイッチなので、母数自体が少ないのだと思います。

150円が4個ある
ここで、さっきの単品150円が効いてきます。
まず4個だけ買えばいい。600円です。
本体が届いたら、その4個だけ挿してみる。ドライバーが認識するか、キャリブレーションが通るか、押し込み量が正しく取れるか。それを確かめてから、35個セットを買えばいい。
通らなければ、600円で済みます。
13,500円の博打が、600円の色校正になりました。

動かなかったときの逃げ道も用意した
もうひとつ考えたのは、全部替えなくてもいいということです。
MelGeek は「複数種類の磁気スイッチの混在使用に対応」と公式に書いています。つまり、文字キーの周辺だけ Attraction にして、F列や修飾キーは純正のままでも成立する。
一日に何千回も打つのは、ホームポジションのまわりです。そこだけ無重力になれば、たぶん目的の八割は達成できます。
35個セットひとつ、4,500円。これなら失敗しても痛くありません。

順番を決めた
こういう手順にしました。
- 本体を買う。純正スイッチのまま、全キーが動くことを確認する
- ファームウェアは、むやみに更新しない
- Attraction を単品4個買う。600円
- その4個を挿して、ドライバーが認識するか確かめる
- 通ったら35個セットを買って、文字キー周辺を入れ替える
- それで良ければ、残りも替える
各段階で引き返せます。
これは臆病なのではなくて、確かめる工程を先に置いているだけです。刷ってから色が違うと言うより、刷る前に一枚出したほうが早い。

パームレストも一緒に頼む
MADE84 Pro は前面の高さが18mmでした。今使っているキーボードより低いのですが、それでも手首が落ちるほど低くはありません。
ここに合わせるなら20〜21mmのパームレストです。
ARCHISS(アーキス)の Premium Wrist Rest Nu(プレミアム リストレスト ヌー)の S サイズが、325×100×21mm。高密度ウレタンにスチールプレートが入っていて、メーカーが「クッション性を保ちつつ、沈み込まない硬さ」と明記しています。
低反発で沈むタイプは、私には向きません。手首が沈むと、指が下から上へ向かって押すことになって、バネを実際より重く感じます。今のキーボードで「バネが強い」と思っていたのも、いくらかはこれが原因だった気がしています。
安く試すなら、同じ ARCHISS の Standard Wrist Rest Short が325×99×20mmで1,300円ほど。木の硬さが好きなら FILCO の無垢材が300×81×20mmです。
スイッチを35個ぶん我慢すると、パームレストが買えます。今回は、そっちを取りました。

次回
本体が届いたら、まず純正のまま打ってみます。それから150円のスイッチを4個挿して、認識するかを確かめます。
採点表では87点をつけました。実際に何点だったのか。答え合わせは次回です。
たぶん、思っていたのと違う結果になります。ここまで、毎回そうだったので。
この記事で参照した資料
- MelGeek MADE84 Pro 公式(対応スイッチ欄に「TTC Magneto / TTC RGB Magneto / Gateron Magnetic Jade」と記載。Attraction の記載はなし):melgeek.com
- MelGeek HIVE ドライバーガイド(非純正スイッチに交換した場合の手動キャリブレーション手順):melgeek.com
- Gateron Magnetic Jade Attraction 公式(初期30±3gf/底打ち30±3gf/総ストローク3.2±0.2mm/底磁束570±30Gs):gateron.com
- 単品150円・35個4,500円の販売ページ(PCワンズ):単品/35個セット
- ARCHISS Premium Wrist Rest Nu 公式(325×100×21mm/高密度ウレタン+スチールプレート/「沈み込まない硬さ」と明記):archisite.co.jp
いずれも2026年8月4日時点の記載です。価格と在庫は変動します。
スコーン打鍵感計画
- #1 湖池屋スコーンみたいなキーボードが欲しい
- #2 湖池屋スコーン評価表を全部公開する
- #3 候補を採点したら、犯人は思っていたところにいなかった
- #4 13,500円の買い物を、600円で確かめることにした(この記事)
- 番外 コピペをすると、貼り付けが三回になった
はじめから読むなら #1 へ。数字が苦手なら #1 → この回、の2本でも通ります。

